TVアニメかつ神(かつかみ)、なんか最終回だったんだが
どうして…どうして…
(ハンク違い)
まいど、初投稿です(以下暫く自分語り)。
気合を入れて夏クールのアニメを見すぎた戒めと、見たんだぞという記録を兼ねて感想を書こうと思います。
まずはいつの間にか最終回がやってきた「かつ神」から参ります。
tvアニメ公式サイト https://katsu-kami.com/
⚠︎注意⚠︎ ネタバレしかしない 原作既読アニメ既視聴勢にとっては退屈でしかない繰り返し過多 逆に未読未視聴勢でもアニメの範囲までなら履修できるかも(?)
おこがましいですが評価置いときます
作画 ★★★★★☆☆☆☆☆
脚本 ★★★★★★★☆☆☆
意外性 ★★★★★☆☆☆☆☆
総合 ★★★★★★☆☆☆☆
可もなく不可もなくというところです。 夏アニメは相対的に見て豊作でしたから、こうなるのもやむなしです。
キャラクター
ハンク(cv.小西克幸)
シャール(cv.加隈亜衣)
ケイン(cv.中村悠一)
エレイン(cv.能登麻美子)
ライザ(cv.日笠陽子)
クロード(cv.石川界人)
キャスト
特段言及することはありませんが、強いて言うならライザ役日笠陽子さんの演技はかなりイキイキしていたように感じました(笑)。
あらすじ(粗筋)
「擬神兵」―人の身に神の如き力を宿した兵士たち―が戦場の神として名を馳せて程なく、力を暴走させたかつての部下を「獣」としてではなく「人」として終わらせるというかつての誓いを果たすべく、元擬神兵部隊隊長・ハンクは幼なじみで同部隊隊員であったエレインと似た碧眼の少女、シャールと出会う。シャールは擬神兵であった父を殺したハンクを恨みながらも、悲劇の原因をこの目で確かめるため彼と行動を共にするのであった。
少々複雑ですが、登場人物たちの行動と動機がしっかりと結びついており特に疑問を抱く点はありませんでした。
†早速本編の振り返り行きます†
物語序盤
- ハンクの大目標
「全擬神兵を殺し、誓いを果たす」で間違いないでしょう。遍く擬神兵はいずれ理性を失うということが明かされているからです。 エレインの仇であるケインも当然その中には含まれています。
- シャールの大目標
「父は何故殺されなくてはならなかったのか、その真実を見届ける」です。当初は父の仇であるハンクに憎悪を剥き出しにしていた彼女ですが、かつての仲間に手をかけるハンクの苦しげな表情に心を動かされたのか、ハンクと共に行くことを決意します。
2人の想いは過去に向いているのが特徴的です。そしてこの時ハンク→シャールのベクトルで影響を与えています。
ハンクとケインの因縁
ハンク、ケイン、エレインは幼なじみで擬神兵部隊の仲間でした。エレインは擬神兵の生みの親とも言える科学者(?)でもあります。理性を失った同胞を目の当たりにして、彼らを救ってやれない自分を責めることしか出来ませんでした。そんな彼女の背負うものを少しでも軽くするためか、ハンクは隊員たちに「誓い」を宣言します。それは「理性を失った仲間は自分たちで殺す」というものでした。何人かの擬神兵が同胞によって討たれた頃、戦争は終結しました。近い将来、理性を失った擬神兵が戦乱の火種を生むことを確信していたエレインは擬神兵をも殺しうる「神殺しの弾丸」を開発。まずハンクにこの銃弾を撃ちこみ、ハンクを殺害。しかしこの時ケインの裏切りにより神殺しの弾丸を受けエレインは死亡。
数ヶ月後、人間離れした生命力を発揮しハンクは目覚めます。朧気ながらにケインの裏切りを目撃していた彼は目覚めた直後でありながらケインに対しての怒りを爆発させます。
ケイン!!!!!
このハンクが壁を殴りつけるシーンはとても印象的でした。
この時点でケインの目的は謎に包まれていますが、物語が進むにつれて明らかになっていきます。
余談ですが、恐らくエレインとハンクは恋愛関係だったのでしょう。アニメの内容だけではわかりませんが、ぶっちゃけケインはかなり男前ですが性格は外道なのでハンクを選んだエレインはいい女ですね。 2人が談笑する後ろでケインが怒りに顔を歪ませるという描写がありますがこれは嫉妬でしょうか。恋は盲目と言いますが明らかに嫉妬剥き出しの幼なじみに気づかないとは2人ともかなり抜けてるんですかね。
物語中盤~
物語が大きく動いたのはTVアニメ第6話「獣の王」。ガーゴイルとの死闘の後、突如として現れたケインにシャールを人質に取られたハンクは、あえて誘いに乗る形でケインの残した言葉に従い夜会に参加します。そこにはクロード率いる部隊であるクーデグラース(後述)が待ち伏せしており、ケインが従えている擬神兵たちを含めた三つ巴の様相を呈します。
突然の能力紹介
- ハンクの能力
通称:ウェアウルフ つまり人狼。夜でないと真価を発揮しないもののとてつもない力を秘めている。
- ケインの能力
通称:ヴァンパイア 瞬間移動っぽい能力、血液を操る能力などかなり盛られている。っょぃ。
続き
ケインはハンクの能力に心酔しているようで、彼のことを「獣の王」と呼んでいます。 「人」であろうとすることがハンクの弱みであると言うケインは、人質であるシャールの脇腹に銃を一発撃ち込み彼の持つ本来の力を解放させようと試みます。 銃弾を受けたシャールの姿はケインの凶弾に倒れたエレインの姿と重なり、ハンクは理性を失うほどに怒り狂います。恐ろしく巨大化したその姿はまさに「獣の王」。 モンスターハンターでいえば災害級の古龍種に匹敵するんじゃないか?というレベルです。 理性を失いまさしく「獣」と化したハンクは近くの街「ホワイトチャーチ」を蹂躙した後行方知れずとなってしまいます。この事件は「ホワイトチャーチの悲劇」と呼ばれ、以降ハンクは他の擬神兵と共に命を狙われる存在になりました。
正直この展開にはかなり驚かされました。今まで毅然に「人」として振舞ってきたハンクでさえ「獣」に堕ちてしまう…。加えてまさかの主人公不在ですから、面白くなってきたなと感じました。
続いて第7話「追憶の引鉄」。第6話からひと月ほど経ち、未だハンクの行方はしれず。里帰り中のシャールは偶然にも自らの故郷でクロードたちクーデグラースと合流する。
クーデグラースとは何か
クロード率いる、擬神兵討伐のために組織された少数精鋭の兵士たちのことである。近代的なガトリングガンなどの兵装や、「進撃の巨人」の立体機動装置よろしくガスを噴射して素早く移動することができる兵装を使用する。
そこでシャールたちが目の当たりにしたのは恐るべきモノでした。それはハンクによって殺されたはずのシャールの父。通称はニーズヘッグであり、その名の通り竜の姿をしています。しかし体は腐敗が進んでおり明らかに様子がおかしい。いわばゾンビのように変わり果てた父の姿を見て彼女は困惑した様子でした。紆余曲折を経て、彼女は自ら神殺しの弾丸を父に撃ち込みます。
戦前、シャールとその父は孤児院を経営しており決して裕福な暮らしではありませんでした。森で動物を狩ることも少なくなく、彼女が持ち歩いている猟銃はその際用いられたものです。彼女は銃の扱いを父から教わっていましたが鹿に手をかけるのを躊躇うほど抵抗があったようでした。
父から教わった銃でその父を殺すとは皮肉なものです。引鉄に指をかけたその時、シャールは自らとハンクの想いを重ねます。
その人の思いを守るために、ハンクはその引鉄を引くのだ。
ハンクは多くを語らない男ですから、行動を共にしていてもシャールと衝突することはしばしばでした。しかしこの瞬間、彼女はまさしくハンクのよき理解者となったと言えるでしょう。
ここでもハンク→シャールと影響を与えている構図は変わりませんね。
改めて父と向き合い、父やハンクへの感情に整理が付いたことでシャールの気持ちは大きく変化します。結果から言えば、彼女の気持ちはようやく未来へ向けられるのです。 自分の考えを柔軟に変えられることこそが彼女の強さですね。 なんにせよ、ハンクと再会しないことには始まりませんからシャールは改めてハンクの行方を追うことを決めます。
クーデグラースの目的はハンクの殺害、シャールの目的はハンクを探す(そしてクーデグラースから逃がす?)こと、目的こそ正反対ですが双方ハンクを探すため行動を共にすることを決め(クロードは乗り気ではなかったが)シャールは再び故郷を発つのでした。
物語終盤~
程なくして、一方のハンクは雪山にいました。やはり目的は擬神兵を殺すことです。ここまで自身を律し、弱音を吐かなかったハンクですが自らの「獣」の面と直面し途方もない自己嫌悪感に苛まれていました。
雪山にいたのはロイという擬神兵、通称ガルム。ハンクのダッシュファイターのような容姿をしています。戦場ではハンクに背中を預けられていたという過去があり、隊長として今でもハンクを強く慕っています。どうやら彼は本気のハンクと戦いたいらしいのですが、ハンクはホワイトチャーチの一件で能力を暴走させたことがトラウマになり能力を発動できません。ガルムはそんな様子のハンクに幻滅しながらも、「人であろうとすることがあんたの弱さだ」「誓いを果たすなんて思い上がりだ、隊長」と語気を強めながらはハンクを仕留めようとします。そんな時クーデグラース一行が2人と邂逅。激しい戦闘の末、崖崩れに巻き込まれてハンクは転落してしまいました。
そしてガルムを追うクーデグラース、ハンクを探すシャールに分かれることになります。
そして第10話「二つの誓い」。目を覚ましたハンクの前にはシャールがいました。彼女が無事だったことを知り、安堵するハンク。シャールが自らの父を撃ったことを聞き、彼も自らの気持ちを吐露します。「俺は、分からなくなった」「俺を、殺してくれないか」と。当然そんなことは出来ない、あなたは人間だと言うシャール。それを聞き、ハンクは殺されることを目的に再びガルムの前に立ちます。
この場面のハンクはとても女々しいですね。正直気持ち悪いですがハンクの不安感や苦悩を表すのにこの場面は一役買っています。気持ち悪いと思わせる小西さんの演技も素晴らしいです。
再びガラムの目の前に現れた変わり果てたハンク。彼の真意に気づいてか、ガラムはハンクを仕留めようとします。
その瞬間、シャールが颯爽とハンクの前に立ち、発砲。弾丸は脚に命中し、擬神兵と言えどタダではすみません。
そしてシャールはハンクに自らの気持ちをぶつけます。「必ず人として殺してあげますから」と。言ってしまえばシャールは自らがハンクの安全装置の役割を担うことを誓ったというわけです。ハンクはその言葉を受けて能力を解放し、ガラムを仕留めます。
サブタイトルにもあった二つの誓いというのはハンクとシャール、二人の誓いのことだったということですね。
そしてここが初めて、しっかりとシャール→ハンクと影響を与える場面です。初めは与えられる側だったシャールがここに来てようやくハンクに救いを差しのべる熱い展開と言えます。
ここからは特段語りたいことがないのでサラッと流します(めんどくさくなったとかではない!)。
最終12話「追う者たち」。ケインの目的がしっかりと明かされました。それは擬神兵を頂点とした国を創ることです。彼は、人間を下等で、下賎な生き物と見下しており人間の醜い本性こそがまさに「獣」であると語ります。
これは一杯食わされましたね(笑)。そう来たかと。正直論破された感が否めない…。
サブタイトルの追う者たちとはケインを追うハンク、ハンクを追うシャールと見て間違いないでしょう。
本編のまとめ
ハンクとシャールの構図の逆転、所々に挟み込まれたケインらのカットなど、徐々に引き込まれていく作品だなと感じました。擬神兵に救いはあるのでしょうか、平和な世界は訪れるのでしょうか、人の醜さとは一体なんなのか、と考えさせられる作品でもあります。また、戦争を題材にしているだけあって暗澹とした雰囲気で、とても自分好みでした。
以降余談云々…
- 主題歌
opテーマ:まふまふ「サクリファイス」
作詞作曲歌唱全てまふまふさんが担当しており(!)、そのハイトーンボイスを十二分に生かしたナウでロックなナンバーです(歌えねぇ)。歌詞の内容は「かつ神」の世界観そのものであり、めっちゃ最高(語彙力欠如)です。(sacrificeとは「犠牲」の意)
edテーマ:Gero×ARAKI「HHOOWWLL」
作曲はけいおん!でお馴染みのTom-H@ckさん。この曲も「かつ神」の世界観を踏襲した歌詞、ゆったりとした曲調でedとしてはぴったりだと感じました。(howlとは「咆哮」の意)
- 個性豊かな擬神兵たち
多くの擬神兵は1話か2話程度の出番でしたが、豪華声優陣の熱演や過去回想によりキャラクターとしての魅力が引き立っていました。同時期のアニメに、「鬼滅の刃」という作品がありますがこちらも敵キャラクターに感情移入できるストーリーで、似通ったものを感じます。個人的には早見沙織さん演じる擬神兵、通称セイレーンが印象的です。多くは語りませんがとても歌が上手いというアイデンティティを持つキャラクターに彼女の声が合致していて素晴らしかったです。同時期のアニメ「彼方のアストラ」でも歌のシーンがありましたがこちらも良かったです(言いたいだけ)。
- 考察的なやつ少し
ケインの真の目的はエレインを甦らせること?
ハンクの能力は本当にウェアウルフ?
ニーズヘッグが蘇生したのはケインの手下の擬神兵の仕業?
と言ったところでしょう。原作では回収されているかもしれませんから、多くは語りません。多少の疑問符は余韻を残すのに必要ですね。
- 敵と同じ力で戦う主人公っていいよね
仮面ライダーシリーズや、進撃の巨人が該当するでしょうか。その力に葛藤する主人公の姿はどの作品でも素晴らしいものです。
- ケインの見た目、神バハのユリウスにクリソツ過ぎて草
能力もヴァンパイアだし公爵っぽい見た目だし、意識してないなんてことがあるのか(反語)。
おわり
長々と語りつくしました、全12話のTVアニメ「かつ神」。続編の製作はあるのか、期待したいところですね。
それでは、またの機会に。
まだ脳裏に焼き付くしょおおけぇぇぇぇぇぇぇえはぁ↑ぁぁぁぁああ
天災級映画、天気の子について
毎度、初投稿でございます。
当ブログは映画「天気の子」のネタバレを含みますが、あしからず。
こりゃあ、スーパーセルやで!
というわけで、本編です。アホ長くて読みにくくてマジで最悪なのでゲロ吐きながら読むことをおすすめ致します。
お品書き
- キャラクターの内面を詳しく考えよう
- 全編通しての率直な感想
- 伏線とか
- ココスキ
- おわり
大まかなあらすじ
雨の降り続く東京。離島での暮らしに嫌気がさし、単身上京した家出少年、帆高。所持金も底をつき、藁にもすがる思いで仕事を求めて訪ねたのはオカルト記事編集事務所(適当)。なんとか平穏な生活を手にした彼であったが、ひょんなことから「100%の晴れ女」、陽菜と邂逅。彼女との出会いが帆高の人生を大きく変えていく…(適当)。
とまあ、公式サイトの引用もパンフレットも知らないので自分なりに導入を書いてみたわけですが、こうして文章にすると色々な事柄が並行して起こっていたことが分かります。それぞれが伏線として機能していくというわけですね!…………。
内面的な部分を掘り下げる
手始めに主要な登場人物の内面を掘り下げる上で、注目していきたいのが、
「拳銃」そして「警察」
拳銃でわかる帆高
冒頭、拳銃盗難(?)のニュースの描写。そして帆高は偶然にもその拳銃を手にすることとなります。直後、陽菜との邂逅。
それからしばらく経ち、別の場所で何やら怪しい男たちと一緒にいる陽菜を見かけた帆高。正義感からか思わず飛び掛るも膂力では敵わず、鞄から拳銃を取り出します(なんで持ち歩いてるんだよ)。主人公らしからぬ形相で発砲。男が腰を抜かした隙に2人で廃ビルへ逃げ込み結果的に陽菜を助けるも「気持ち悪い!」と拒絶され忌々しげに拳銃を投げ捨てます。
この拳銃が物語終盤再登場するのは正直予想出来ませんでした。そしてまた1発撃ってましたね。度胸が凄いです。
おさらいはこの辺にしてここから真面目。
彼の持つ拳銃、その銃口は常に周りの大人に向けられています。劇中、周りの大人は彼の敵として立ちはだかるばかりなので、別に違和感はないと思われるかもしれませんが、一介の高校生が大人に拳銃向けれますかね?ここに帆高の「生き様」が現れてると私は思います。
島での暮らしに嫌気がさし(細かくは語られていない)上京してみたり、陽菜を助けるため年上の男に飛びかかったり、彼には行動力がありますがそこには「計画性がない」のです。
その根拠の1つとして冒頭、彼がフェリーの甲板に飛び出していき滝のような雨(+巨大な雨粒?)に打たれるという場面があります。ここでも彼は計画性のなさを遺憾無く発揮し命を失いかけるわけです。
とここまで彼の計画性のなさをdisってしまったわけですが、こと「陽菜を助ける」ということに関してはその計画性のなさが功を奏したと言えます。自分の気持ちに真っ直ぐだからこそ、容易く「世界」と「彼女」を天秤にかけられたというわけです。
以上、拳銃と帆高の一貫性についてのお話でした。
警察と劇中における対比
前述の通り、この作品における大人とは基本的に帆高の敵として描かれています。警察もその例外ではありません。
印象的な場面は陽菜が消えてしまった後。帆高が
「陽菜さんは人柱になった」
「陽菜さんのおかげで空が晴れた」
「陽菜さんを探しに行く」
と強く訴えていたのですが、警察官の1人が
「鑑定必要ですかね?」
と一言。精神疾患を疑われています。
このシーンは胸が痛みます。辛いです。
ここで注目したいのは、劇中における「警察」というのは客観的に世界を見ている存在だということです。さらに言えば、
オカルトチックな描写が多い中、常に中立の立場から正しい行動を取っていると言えます。
ここで帆高との対比構造が見えてきます。
劇中の大人たち
話が散らかりますが、「大人」といえば、主要なキャラクターの中に帆高の上司である須賀とその姪の夏美(こちらも上司?)がいます。
須賀は警察に追われる身となった帆高を1度は追い出し、見捨てるという合理的な選択をとったわけですから、対比構造に当てはめれば真っ当な大人と言えます。
ところが物語終盤、それとは打って変わって非合理的とも言える行動をしたのもまた事実です。
ここで取り上げたいのは、夏美が
「帆高とケイちゃん(須賀)って、似てるよね」
的なことを言った場面です。昔から須賀のことを知っている夏美が言うのですから、須賀は帆高と似たもの同士だとみて間違いないでしょう。
ここで浮かび上がるのは
昔、須賀は帆高に似た「無計画」で「真っ直ぐ」な男だったが、大人になり「合理的」で「中立」な真っ当な大人に変わった。
ということです。
その大きな理由として、娘の親権争いが挙げられるでしょう。帆高に対しての
須賀:お前も大人になれ
という言葉に胸が痛くなりました(バカの一つ覚えかよ)。
その後、就活終わりの夏美に叱られる場面を経てどんな心情の変化があったのでしょうか。昔の須賀を知っていた夏美だからこそ、帆高を追い出すなんてありえない!と思ったのでしょう…。
そんな須賀ですが、帆高に感化されたような描写が幾つかありました。
特に老人警官が事務所を訪ねてきた場面で
「人生を棒に振ってでも、もう一度会いたい誰かがいるというのは素敵なことだ」
的なことを聞いて、須賀が思わず涙を流すという描写がありました。
若くして奥さんを亡くした自分と、陽菜を失った帆高を重ねて感極まった、と考えられます。
そして帆高ともう一度話すために、彼が訪れるであろう廃ビルに向かう…という流れです。
須賀は、帆高の覚悟を問いたかったのではないでしょうか。
あくまで初めは彼を止めるために諭していた須賀ですが、
帆高:俺は…もう一度、あの人に、会い
たいんだ!
という帆高の言葉に、心を動かされ警察官2人を組み伏せて帆高を援護します。
対して夏美は就活中という微妙な時期。劇中一貫して帆高の味方でした。警察とカーチェイスをするなんて常識的ではないですね(さすがにどうかと思った)。勝手な想像ですが、かつての須賀と帆高を重ねて、「応援してあげたい」と思っているのではないでしょうか。
彼女の就活風景については、
夏美:御社が第1志望です!
の一言に尽きますがこれも大人っぽいとは言い難いですね…。
いい意味で子供らしさを失っていない2人だったからこそ、オカルト記事の編集なんて胡散臭い仕事もなし得たのかもしれません(笑)。
陽菜(と帆高)
帆高:100%の、晴れ女!?
ちょうど1年前、母を亡くした陽菜。
年齢を偽ってアルバイトで生計を立てながら弟の凪と暮らしているというとんでもない女性です(更に天気の巫女とかいうもりもり属性まである)。
自宅を訪れた帆高に手料理を振る舞うカットが印象的。器用に卵の黄身と白身を分け、育てている豆苗と小口ネギを台所バサミで切る手際の良さと来たら…(すき)。
彼女の内面的な描写はそこまで多くなかったと思いますが、優しくて芯の強い女性であることは間違いないでしょう(ただし義務教育は必要)。
2度目に帆高と会った時、陽菜は水商売か風俗店かキャバクラか(怪しい店)で働こうとしていました。それほど生活に困窮していた陽菜にとって、自分の空を晴らす能力の有効な使い道を示してくれた帆高は、陽菜にとっては大きな存在だったと思います。
帆高:天気って、不思議だ。ただの空模
様に、人間はこんなにも心を動か
されてしまう。
人を笑顔にする「天気を届ける」仕事を心から楽しんでいた陽菜は、夏美から天気の巫女が人柱であることを伝えられた時、何を思ったのでしょう…。そして帰路の場面、
陽菜:帆高っ!
帆高:陽菜さんっ!
直後、空に引き寄せられる陽菜。前述の通り、多くは語られない陽菜の心情ですが丁寧に読み解くことでこの時何を伝えようとしたのか予想することが出来ます。
その晩、陽菜の家に警察が来た時も彼女は気丈に振舞っていました。彼女にとっては凪を守ることが最重要項だったように見えます。そのために自分は人柱になる訳にはいかない。そして帆高に、「凪を頼む」なんて言えない。
しかし、ここは帆高が男を見せますね。
帆高:俺は帰らない。
凪:おぉっ!
そして、3人の逃避行が始まります。
夏真っ盛りとは思えないほど冷たい夜、ひときわ強く降り頻る雨の中。人柱になることを拒む巫女を責め立てるような、そんな空模様。陽菜の目にはそれがどう映ったのか。
途中、彼女が雷を落とす場面があります。
ライデイン、電撃使い、かみなり(pp9/10)
いずれにせよとんでも能力ですね。はい。
なんとか宿(休憩のあるホテル)を見つけた3人。最後の晩餐の様相で楽しんでいました。「恋」とか「恋するフォーチューンクッキー」とかカラオケの選曲がちょい古め。
帆高:俺達は、なんとかやっていけま
す。これ以上、俺達に何も足さ
ず、何も引かないでください。
奇しくも翌日は陽菜の誕生日で、日付が変わった瞬間帆高は温めていたプレゼントの指輪を陽菜に渡します(パッと見プロポーズ)。めちゃくちゃ甘酸っぱいシーンですがこの後とんでもない試練があるんだろうと予想できる展開ですから、気が気でありませんでした(笑)。
陽菜:帆高は、この雨が止んで欲しいと
思う?
帆高:ぇ…?うん。
決定的な、一言。陽菜は、帆高に天気の巫女の末路を打ち明けます(微エロ)。そして初めて陽菜が帆高に弱さを見せる場面でもありました(微エロ)。この時点で2人が相思相愛であることは言わずもがなですが、彼女は強く、そして優しい女性ですから自分が消えることを選択します。帆高に凪を預けて。
陽菜が年相応の弱さを見せた場面はとても少なく、帆高が騙されていたのもうなずけます。年上かと思ったら年下とか、1粒で2度美味しいとはこのことですか!()
陽菜の心情を追っていたはずが、ストーリーの繰り返しになってしまった。コホン
優しく強い女性、陽菜。
天気を届け、人を笑顔にすることに自分の使命を見出す。そして帆高に恋をする。自分が消えることでより多くの人を笑顔に変えた。
美しい自己犠牲の心。古典ならここで終わってるいいお話です。御伽草子です。
閑話休題。
ここまで淡々と主要な人物の心情をうっすらと深く語ってきたのですが、1本のオリジナルアニメ映画としてこの映画を見た感想としては、
めっちゃ面白かったー!けど君の名は。よりリアリティに欠けた作風だったなー!
です。前作君の名は。と比べるのも野暮なのですが、クロスオーバー作品でもあるということもあり色々と引き合いに出されることも多いと思われます。
前作「君の名は。」との比較
リアリティに欠ける、というのは大袈裟なことを言えば、帆高の父親が実は警視総監だとか警察内部の人間が天気の巫女と何らかの関係があるとかで、全部解決するならいいのですが帆高は街中で発砲とか(銃刀法違反)、1度逮捕されて脱走(公務執行妨害)とか線路の中走ったりとか(鉄道営業法違反)もう数え切れないくらいの罪を犯してるわけですよ。
これって劇中でも言われてますが完全に人生棒に振っちゃってますよね(笑)。
君の名は。ではどうでしょうか。
瀧は時間軸の問題でそもそも直接関与できないわけですから勿論なんの問題もありません。
しかし三葉(並びにてっしー、さやちん)は町内放送ジャック、発電所爆破をやらかしてます(笑)。これは当然大問題なのですが三葉の父親は町長で、大災害の最中ですから有耶無耶にすることは難しくないように思えます。ましてやド田舎ですから、メディアもそこまで暴れ回ることはないでしょう。
つまり、見知った東京が主な舞台であると言うのは、本来天気の子のリアリティを高める要素の1つであったはずが、かえって現実との乖離を産んでしまったというわけです。これは劇中の設定にケチをつけたいとかではなく、ミクロな世界観の話なので、細かいことは気にするなそれ
と言ってしまえばそこまでです。ひとまずこの辺で終わりにします。
伏線、構成の緻密さ
1度見に行っただけで小説も読んでいないので、極めて漏れが多いと思いますがあしからず。
- 厨二臭い占い師
物語序盤から、天気を操る能力には代償がある、詳しく言えば「神隠しに遭う」という描写がありました。胡散臭い占い師も信用できるのかもしれませんね 。
- 陽菜のバイト
陽菜は2度目に帆高と会った時、バイトをクビになった 理由を明かしていません。全てを知った後なら、クビになった理由は「年齢詐称がバレた」からだと考えられます。ここで理由を明かさないのは不自然ですから、なにかやましい事がある、ということがこの描写から想像出来ます。
- 時系列のミスリード
これは受け取り手次第の話ですが、pvや物語冒頭、印象的な「世界の形を変えてしまった」という帆高のセリフがあります。これは劇中の時系列でいうと最後にあたる場面のセリフですが、それを物語冒頭に持ってくることでミスリードを誘ってるのではないか、というお話です(説明下手か)。
あんま思い出せなくて草(以上)。
個人的なココスキポイント
長くなりましたが最終章です。段々主観的な話が増えてきましたが、最後は極めて主観的です。「それな!」とか「は?」とかあーだこーだ言ってくださると幸いです。アホみたいに長い上記の文章と重複するところがありますが、多分誰もちゃんと読まないのでセーフ。
- グランドエスケープが流れたお空を飛ぶとこ
ここはpvでも印象的でした。この場面目当てに劇場に足を運んだと言っても過言ではないです。この、新海誠作品特有のキャラクターが話すのではなく、madのようにBGMでキャラクターを表すという手法はめっちゃ好きです。「愛にできることはまだあるかい」も非常にメッセージ性が強く、帆高の心情とリンクした曲ですが、グランドエスケープ好きすぎるマンの為熱量があまりない。
- 陽菜's クッキング
手際の良さがたまらん。あと美味そう。帆高そこ代われ。
- 浴衣を着た陽菜と花火と帆高のモノローグ
浴衣と美少女組み合わせたら最強です。鬼に金棒です。アーノルド・シュワルツェネッガーにAKMです。そんな映像をバックに、帆高のモノローグが流れます。
帆高:…心を、陽菜さんに動かされてし
まう。
花火ドーン。というね。
- ホテルから出た帆高、その目に映るのは眩しい日差し___みたいな場面。
切ない。不安感が確信に変わった瞬間ですね。ゾクゾクします。
- 本来の姿を取り戻した世界。晴れ女は人々の心の中に。
世間の反応に一切間違いはないのですが、晴れ女の結末を知っている我々にとってこの場面は辛い…。
- 思い出したかのように降り出す雨。帆高と陽菜の再会を確信する須賀
かなり涙腺に来る場面だと思います。このカットを考えた人は天才です。
と、上げればキリがないのでこの辺りでおしまいにします。以降余談。
キモオタ観点
とか粋すぎる!!!たまらん!!!(過呼吸)
こんなのオタクは喜ぶに決まってますね。ええ、その通りです、新海監督。
以上余談でした。
まとめ
劇場アニメということで、美麗なアニメーション、壮大な世界観、エモーショナルな音楽、どれをとっても最高レベルなのは間違いない「天気の子」。
よく考えたら雲動かしてんのとか頭おかc。
盛夏の日差しですら情緒的に感じてしまうようなお涙頂戴ストーリーもめっちゃ感動する(語彙力)。
正直天気の子でここまで書いたのは自分くらいなのでは?と思ってしまうほど長く書きましたが、このブログを見てもう一度「天気の子」を見に行ったとか、小説を買ったとか、そういう人がいるわけないやろ(突然の裏切り)。
PS
小説版は映画で描かれなかった話も含まれていると思うので、ぜひ買うことをおすすめします(ダイレクトマーケティング)。
自分も近いうちに読むつもりです。
「このブログを書いた感想?キミノソウゾウドオリダヨ☆」